フランクフルトで行われていたブックフェアのことなんかを聞くと、世界的にデザイン書はあまり出ていなくって、景気の悪いジャンルらしい……です。でも日本ではいい本がたくさんでてますよね。
ここ数日で手にした本も、すばらしいものだったので、今日はブログでご紹介します。
まずは、『
一〇〇年目の書体づくり ーー秀英体 平成の大改刻」の記録』(大日本印刷株式会社著/発行、DNPアートコミュニケーションズ発売)。
B5版のこの書籍は、昨年(ひとまず?)終了した、秀英体「平成の大改刻」の記録である。記録というと堅苦しいように感じるかもしれないが、読みやすい文章と豊富な図版で、大変わかりやすい。私も(ホントはゲラ読まないといけないのに)この週末、ついつい読みはじめ、一気に読了してしまいました。
これだけ多くの人が関わり、制作・調整がなされて改刻されてきたのかと、いくつものページで胸が熱くなった。それにもかかわらず、制作途中の秀英体を見せた祖父江慎さんから「ええ〜っ! これが初号? こんなの絶対に使わないよ〜!」と全否定されたり(涙滂沱として禁ぜず……)。そこから半年という短い期間で、漢字ほぼ全文字を修正したという記述には、思わず目を見張った。
デザインや本づくりに携わっている人は、胸に響いてくる本だと思います。ぜひ読んで見ていただきたい1冊です。
書籍版(2000円+税)は全国書店で発売中。
電子版(500円+税)も出ていて、こちらは「honto」にて販売中。ちなみに電子版は2013年11月30日まで0円キャンペーンが実施されてるよ(honto会員登録が必要)。
もう1冊の文字本は、正木香子さんが書かれた『
文字の食卓』(本の雑誌社刊)。
書体、特に「写植書体」に注目し、39書体に渡る多彩な写植書体をテーマにしたエッセイ集。著者の正木さんのWebサイト「文字の食卓」に連載されていた記事を再構成、加筆修正してまとめられたもので、私も以前から楽しみに読ませていただいていたサイトだった。
正木さんは、めっちゃくちゃ書体、写植書体を愛してるんだな……と思いながら、その優しい視線、愛しているからこそのマニアックな視線から紡ぎだされる文章を改めて読んだ。
正直、本書が「本の雑誌社」から刊行されると知ったとき、大変に驚いた。というのも、こういう本はデザイン書を出している出版社から出されるものだと思っていたので、いわゆる「一般書」をつくっている出版社から出るという意識がなかったのだ。
でも、こうしてまとまった『文字の食卓』を読むと、うーむ、確かに、本好きな方々は(もちろん文字やデザイン関連の方もだが)こういった内容に興味があるだろうな。おもしろいと思われるだろうなと、自分の狭い考えを反省する思いだった。
専門書としてでなく、誰でも読めるエッセイ集となっているのが、本当にすばらしい。こちらもぜひとも実際に手に取って読んで見てほしいなと、強く思った1冊なのでした。
(そして、Web本の雑誌に載っている
著者インタビューも興味深いです!)
秋の夜長(っていうか、もう冬っぽくて焦りますが)、そのお供にぜひ!