数年前、図書設計家協会著の『装丁の仕事174人』(玄光社MOOK)を手にしたとき、そのカバーの紙の質感に「なんだ、このめちゃくちゃヌメッとした紙は!」と驚いたものだ。紙というよりゴムのような、今までになかった質感の紙。
でもこれだけゴムみたいで滑らない紙だと、オフセット印刷はできそうにないし、紙としては使うのが難しそうだなとも思った。ちなみにこのときは、図書設計家協会と竹尾が一緒にオリジナルペーパーをつくったというもので、市販されているものではなかった。
それから数年を経て、色や質感なども改良を重ねて、「
NTスフール」という紙が竹尾から発売された。これもゴムのようなというか、ヌメッとしたゴムのような皮のような独特の質感は残しつつも、加工適性をあげ、色や厚さのラインナップが揃い、いろいろな人が使いやすい紙になっている。
そんなNTスフールのすごいサンプルキット(でいいのかしら?)を昨日いただいた。いやぁ、こんな豪華なキットは、近年見たことが無い(といいつつ、ビオトープのもすごかったな)くらいに手間もお金もかかった(いるように感じる)ものだ。
それがこちら。
A4サイズほどの貼り箱。もちろん貼ってあるのはNTスフール(赤茶)。持つと、しっとりとしていて皮のような独特の質感がよくわかる。
あけてみるとそこには、小さな箱が6個パズルのように入っていて、それらはそれぞれNTスフールの貼り箱というこれだけでもすごく豪華な仕様。その小箱を開けてみると、中には封筒+便せんや、NTスフールの見本帳、紙クリップ(NTスフールが貼り合わせてあってすてき)、エンボスシール、パズルが貼っているという、制作費を考えると(常にお金のことを考えてしまう……)気が遠くなるようなキットだ。
もちろん、これらのサンプルもいいのだが、私が一番驚いたのは、NTスフールの滑らなさを実感できたこと。箱をナナメ、というか、ほぼ立てても中の小箱が動かない!
これは、NTスフールが独特な皮っぽいゴムっぽいぬめぬめした質感を持っているからこそ。この機能を生かしたプロダクトづくりに使われると、それは面白い紙ものができそうだなぁ。