昨日のブログでもちょっと触れましたが、『
デザインのひきだし18』は、通常の予定よりかなり遅れて納品となっています。それは製本過程の一部で、予想以上に時間がかかることが判明したからなんですが、それが「蛍光色の小口塗装」です。
一見、今回の号は、蛍光色の表紙が目にまぶしいながらも、製本としては、ピンクのピカピカな緩衝材を表紙にした
前号の方が、手間がかかりそうに思える。でも、前号はきちんと予定していた日にすべての工程が終了した。
今号は蛍光特集のため、表紙はもちろんのこと、小口までも蛍光色にしたい! と思い、ひきだしの製本をしてくださっている
図書製本に相談したところ、それであれば以前本誌でも小口塗装でご紹介した
本間製本にお願いしようというご提案をいただきました。
私ももちろん異論はなく、ぜひお願いしたいと思っていたのですが、どうにもお返事が芳しくない。『
デザインのひきだし7』でも、本間製本で小口を赤く塗装してもらっている。なので数量もサイズも問題ないのでは? と思っていたのですが、いやぁ、そんな簡単な話じゃなかったんです。
本間製本では小口塗装を機械で行うラインをお持ちなのですが、まず、その機械で使える染料として蛍光色がない。新規で探してもらったのですが、やはりちょうどいいものが見つからない。そこで蛍光顔料を希釈して使ってもらうことになり、これなら小口塗装の機械になんとか入れられるかも……ということになったのですが、そうなると今度は塗装時に、小口に付かず排気口からバキュームされてしまう蛍光顔料の量がバカにならないということに。
機械で行う小口塗装は(『
デザインのひきだし7』でレポートしています)、大きな箱の中にスプリンクラーのようなものがついていて、その箱の中に本がベルトコンベアで運ばれ、スプリンクラーから出る染料が吹き付けられるというしくみ。その際、小口につかず、空気中に舞ってしまう染料は排気口から出されるのです。通常の色であれば、染料自体が比較的安価で、かつそれを希釈しているので、排気と一緒にロスしてしまう顔料は、さほど価格的に問題ないそうなのですが、蛍光顔料は比べてものすごく高い。それをロスしてしまうと、かなりの金額になる。
じゃあ、実際はどうやって塗装しているのか? それがこちら。

何やらブルーシートで覆われた中に人がいる。中をのぞいてみると

うわぁ! 手で小口に蛍光顔料を吹き付けてる!!
そうなんです。なんと10冊ずつ、職人さんが小口に色を手作業で吹き付けてくれているんです……。ぎゃー!
申し訳なさに、自分を「鬼」と呼びたいです(でも、さらに後ほど、「大鬼」と呼びたいくらいの事態も発覚します)。
顔料のロスを少なく、小口塗装するにはこれしかないという判断で、こうして10冊ずつ、エアブラシで蛍光顔料を塗布していただいています。それもエアブラシでサーッと塗っただけでは濃度が足りないため、1面につき4往復されていました……。
改めてその工程をみていくことにします。まずは製本が終わり、小口が白い本誌を10冊ずつきっちり揃えます。

こうしてみると、小口塗装してないと、派手さ加減がかなり少ないですね。次に蛍光顔料に糊となるバインダーを混ぜ、それをエアブラシに投入します。
揃えられた本誌を、飛び散った顔料が工場内に飛散しないように、強力な排気口のついた箱の中(実はこれは、機械で小口塗装するときの塗装部分をつかっています)に持って行きます。
小口に1面につき4往復、蛍光顔料を吹き付け、それを天地小口、三方すべてに施します。うーむ、これで12往復!
塗装し終わったら、また手で運び、また塗装されていない本10冊を箱の中に持って行って……の繰り返しです。10000÷10=……答えを出したくありません。
これで塗装は終わり……かと思ったら、そうじゃないんです。このままだと塗装した蛍光顔料が定着しきらず、手などについてしまう可能性がある。そこでこの後さらに、糊成分であるバインダー(無色)をもう一度吹き付けるんです!(すみませんすみませんすみません)
ううう、なんて面倒で手間のかかることを頼んでしまったのか。申し訳なさでいっぱいですが、でもできあがった本をみると、やっぱりステキでうっとり(やはり、大鬼だな、私)。
そんなわけで、皆さんの元にお届けできるのに、もう少しかかってしまう地域もありますが(もう並んでいる地域もあります)、書店で表紙や内容と一緒に、この手間のかかった小口もぜひご注目ください! どうぞよろしくお願いします。